マンガ大賞2017で13位にランキングしたことで話題になってますね。
話自体よりも、ジブリというか「ラピュタ」や「コナン」のようなスチームパンクテイストのSFファンタジー的な世界観と、大胆に宮崎駿テイストに寄せたタッチがインパクト大でツカミはバッチリです。
捕龍船と呼ばれる飛空艇に乗って龍(オロチ)と呼ばれる飛行生物を狩って解体し、取れた肉や油などを街で売ることを生業としている龍狩りの一団の活躍というか日常を描いています。龍と言ってもいわゆる爬虫類系のドラゴンではなく、海洋生物的なグロテスクな造形になっています。龍狩りも鯨漁のようなイメージで描かれています。
マイペースで食い意地が張っているが龍狩りの腕は確かで、美味い肉を喰うためならかなり無茶も辞さないミカ(男)が一応の主人公になっていますが、若手クルーのジローと新人女性クルーのタキタ、「美しすぎる龍狩り(笑)」ヴァニーがそれぞれメインとなるエピソードをもらっています。たぶんこの4人を中心に話を回していくつもりではないでしょうか?
それ以外のキャラは何人かについて船での役回りやちょっとしたキャラ付けが行われた程度で、全体的にあまりキャラの掘り下げはされていませんしね。
ジャンルとしては「ダンジョン飯」以降ちょっとしたブームになっている、異世界グルメものの括りですね。明らかにそういう企画ありきの作品だと思われます。
作者の以前の作品の絵柄を見るとそこまで駿タッチでもないので、あえてそれに寄せているのは「ジブリ作品の食べ物は美味しそう」という定評からきた単純な企画でしょう。まぁ、それでもその再現度はかなり達者なので、それだけでも大したものではありますが。
賞をとるほど面白いかというと個人的にはちょっと微妙です。普通に読めてそれなりには楽しめるんですが、引っ掛かりがなさすぎて後に残らないんですよね。あくまでファンタジー世界での日常を描こうとしているのか、長期戦を狙っているのか話の密度もかなり薄いです。絵は達者で借り物が多いとはいえ世界観もかなり作り込んであるんですが、その雰囲気をなんとなく楽しむだけで終わってしまいます。
異世界グルメものとして捉えるのであれば、その点ではけっして成功しているとは思えません。必然的に調理シーンや食事シーン・レシピなどもそれなりの分量が盛り込まれてくるのですが、絵的にも描写的にも美味しそうでもなければグッとくるものがないんです。結局、料理としては肉を焼くか煮るか程度のもので終わってしまうので全く面白みもないし、クックパッドの素材を差し替えただけみたいなレシピも、作り手の自己満足以上のものにはなっていません。
「ダンジョン飯」の魔物料理ネタや生態ネタは、あくまで徹底的に細部までこだわりぬいたパロディとして、キッチリ作り込んだことで面白さにつながりましたが、この作品ではグルメ要素はあまり効果的に活きていません。
話においての要素としてはむしろノイズに近い印象すらあります。結果的に中途半端なグルメ要素にページ数が割かれたせいで話が薄くなり、なおかつ展開も遅くなっているというようにしか見えません。
また、龍狩りを捕鯨になぞらえた意味も今のところ見いだせません。作中では捕龍船ははぐれ者やならず者が多いという説明や、地上になじめないワケアリという設定のキャラもいますが、それについては今のところ深くは語られていません。
主人公の一団は描写上はコギレイで常識人が多くヤサグレ感はありませんし、また女性クルーも多くて楽しんで仕事をしている印象です。特別社会的なメッセージなど盛り込むつもりはないのかもしれません。
たぶん「異世界グルメもの」の体をつくろっておけば話は好きに転がしていいよ!と言う方向性なんじゃないでしょうか? そこそこ話題になったことですし、だんだんと作者が描きたい話が前面に出てきている途中なのだと思いますが、今のところは企画モノの枠を超えて作家性を出すまでには至っていません。
これからどう転がっていくのかという点だけには少し興味があるので、もうしばらくは様子を見て見たいと思います。
